宇治茶の歴史において、この老舗が果たした最大の功績のひとつが、大正時代に生み出された「碾茶炉(てんちゃろ)」だ。それまで木炭や手作業に頼っていた碾茶(抹茶の原料となる茶葉)の乾燥工程を機械化・標準化することで、茶葉本来の鮮やかな緑色と独特の「覆い香(おおいか)」を損なわずに品質を安定させることに成功した。
今日、日本全国の抹茶工場で使われている乾燥炉の原型は、まさにこの地で考案されたものだ。伝統を守ることと、合理的なイノベーションを起こすことは矛盾しない。古き良きものへの敬意を持ちつつ、常に最高の品質を追い求める飽くなき探究心こそが、時代を超えて人々を魅了し続ける理由だ。