「梅の木」の暖簾をくぐる来訪者の約9割が注文するのが、代名詞である「みそかつ定食」です。「味噌カツ」と聞くと、多くの人は愛知県名古屋市の八丁味噌を使った濃厚で強い渋みのあるタレを想像するかもしれません。しかし、倉敷の梅の木が供する一杯は、その先入観を鮮やかに覆します。
提供される味噌ダレは、赤味噌特有の角やエグみが一切なく、香味野菜の旨味や出汁の深み、そして程よい甘みが調和したデミグラスソースにも通じる芳醇な味わいに仕上がっています。薄めに叩かれて驚くほど柔らかく仕上げられたヒレ肉、きめ細やかなパン粉でサクッと揚げられた衣、そして皿いっぱいに敷き詰められたシャキシャキの千切りキャベツ。これらが三位一体となり、重厚でありながら驚くほど軽快に喉を通っていきます。
原材料費の高騰が続く昨今においても、日常のランチとして手の届く価格設定を維持している姿勢には頭が下がります。ご飯や赤だしの炊き加減・出汁の取り方にも手抜かりがなく、一口ごとに職人の矜持が伝わってきます。