後年の証言や福田己津央監督のインタビューで語られた言葉は、当時の状況が決して偶発的なミスではなく、意図された実験と計算の果てにあったことを物語る。監督はシンを「等身大の若者」として描こうとした。完璧な英雄ではない。間違えるし、感情に流される。それこそがリアリティだった。
しかし、50話という限られた尺のなかで、シンの挫折と再起を描ききるには時間が足りなかった。シンの周囲に配置された大人たちが彼を正しく導けなかった点も、彼の孤立を深めた。主人公が闇に呑み込まれ、敵対する側にまわってしまう。この極めて異質でチャレンジングなドラマ構造は、SFロボットアニメの王道ストーリーを期待する大衆の需要と強い摩擦を起こした。結果として、物語を収拾させるための重力としてキラの存在が必要不可欠となったのだ。