徳川宗家の当主という肩書は、どこか浮世離れした雲の上の存在を連想させる。だが、実際に立ち対峙する徳川家広氏の物腰は驚くほど柔らかく、語り口は軽やかだ。米コロンビア大学大学院で国際関係学を修め、長年翻訳家や経済評論家として第一線でペンを執ってきた経歴が、彼の思考に世界基準の客観性をもたらしている。
偉大な祖先である徳川家康から数えて19代目。父である第18代当主・徳川恒孝氏から宗家の家督を継承して以来、彼の日常は多忙を極める。全国各地に散らばるゆかりの地での法要や式典に出席する傍ら、日常では一人の読書家であり、海外ニュースを分析する研究者でもある。「歴史は飾っておくものではなく、使いこなしてこそ価値がある」――そんな持論を持つ彼の素顔は、伝統を守る守護者でありながら、冷徹なまでに時代の変化を見据えるリアリストだ。