ギリシャ神話の半人半馬にちなんで通称「ケンタウロス」と命名されたこの株は、オミクロン株系統(SARS-CoV-2 BA.2.75)の派生形である。従来のデルタ株や初期のBA.2、BA.5株と比較した際、最も著しい違いは上気道における粘着性と増殖スピードの速さにある。
患者から報告される主な初期症状としては、激しい喉の痛みが挙げられる。ガラス片を飲み込んだかのような刺すような咽頭痛に続き、38度以上の急激な発熱、特有の倦怠感、さらに一部では下痢や嘔吐といった消化器症状が顕著に現れるケースが増えている。従来の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で頻発した味覚・嗅覚障害の頻度は低下傾向にあるものの、症状の出始めが極めて急激である点が臨床現場の医師から指摘されている。
国立感染症研究所(NIID)が実施しているケンタウロス株(BA.2.75変異株サーベイランスプロジェクトの最新解析データによれば、本株のスパイク受容体結合ドメイン(RBD)に位置する「G446S」や「R493Q」といった変異が、ヒト細胞のACE2受容体への結合親和性を劇的に高めていることが分かった。これが、過去に獲得した抗体を容易にかいくぐり、圧倒的な感染力を生み出す最大の秘密である。