酒場文化の要と言えば、カウンター越しに客を見守るママの存在を外すことはできない。鋭い観察眼と、絶妙な間合いで投げかけられる一言が場を和ませる。客同士の会話が途切れそうになると自然な話題を振り、過熱しそうになれば穏やかに嗜める。
肩書きや年齢の壁は、この店のカウンターでは何の意味も持たない。大企業の役員も、起業したばかりの若者も、遠く海外から訪れたバックパッカーも、ママの前では皆ひとりの「客」として対等に扱われる。この公平で温かな統率力こそが、殺伐とした都市生活の中で人々が心地よい居場所を感じられる最大の理由だろう。