2026年、世界各地のカフェスタンドで「抹茶」の文字を見ない日はない。だが、急速な需要拡大が生み出したのは、工業的に大量生産された粗悪な粉末茶の汎用化という悲しきリアリティだ。色彩だけが鮮やかで苦味ばかりが立ち立つ新興ブランド製品とは対照的に、宇治の本物に足を踏み入れた者が目にするのは、まったく別の次元のクラフトマンシップである。
日差しを遮る覆い下栽培によって極限まで引き出されるテアニンの旨味。手摘みによって丁寧に選別された一芽一芽の若葉。抹茶が単なる「ヘルシードリンクのベース」ではなく、極上のワインやシングルモルトウィスキーにも比肩する贅沢な嗜好品であることを、宇治の茶畑は静かに物語っている。