ネット上では「空が真っ黒だから、大惨事の火事に違いない」という短絡的な憶測が飛び交いがちですが、これは燃焼工学の観点から見ると必ずしも正確ではありません。煙の色や量と、火災の延焼規模・人的被害の大きさは必ずしも比例しないという事実は、一般にはあまり知られていません。
燃焼における煙の色は、「何が燃えているか」と「酸素の供給状態」によって決定されます。木造住宅の木材や紙類が十分な酸素のもとで燃えている場合、初期段階では白〜薄灰色の煙が出ます。一方、タイヤ、合成ゴム、プラスチック製パレット、車両のバッテリー、あるいはアスファルト素材が燃焼すると、炭素微粒子が大量に含まれるため、たとえ火元が数平方メートルの小規模なボヤであっても、凄まじい漆黒の噴煙を大気中に放出します。
逆に最も恐ろしいのは、「完全燃焼に近い高温状態や、有毒ガスを伴う火災では煙が薄く見えることがある」点です。煙の色だけで危険度を低く見積もり、「たいした煙じゃないから避難しなくていい」と判断するのは極めて危険です。また、臨海部の製鉄所や化学プラントでは、設備の定期点検や安全弁の作動に伴うフレアスタック(余剰ガスの燃焼炎)や冷却塔からの大量の水蒸気が発生することがあり、これらが夕日や雲に反射して「遠目には大火災に見える」誤通報ケースも日常的に発生しています。煙の色彩だけに惑わされず、公的な事案種別発表を待つ姿勢が求められます。