かぐや姫の解散後、この楽曲に新たな命を吹き込んだのがシンガーソングライターのイルカでした。1975年11月5日にリリースされたイルカのカバーシングルは、オリコン週間チャートで最高3位を記録し、累計80万枚以上の大ヒットを達成。このカバー版の爆発的なヒットによって、『なごり雪』は全国津々浦々に知れ渡る国民的ソングとなりました。
原曲とカバー版の決定的な違いは、ボーカルの質感のみならず、松任谷正隆による革新的な編曲(アレンジ)にあります。かぐや姫の原曲が伊勢正三の繊細なアルペジオと哀愁を帯びた男性ボーカルを主軸にした「素朴なフォークソング」であるのに対し、イルカ版はフェンダーローズ(エレピ)やストリングスを贅沢に取り入れた「洗練されたニューミュージック」へと昇華されています。
レコーディング当時、イルカは「伊勢正三さんの歌があまりにも完璧で、自分が歌うなどおこがましい」と当初はカバーを固辞していました。しかし、伊勢正三自身が「イルカの声でこの歌を歌ってほしい」と強く推薦したことでカバーが実現したという逸話が残されています。