宮崎合宿におけるダルビッシュの立ち振る舞いは、従来の「孤高のエース」というパブリックイメージを完全に塗り替えました。その象徴として語り継がれているのが、オリックスの育成出身右腕・宇田川優希投手を救った「宇田川会」のエピソードです。
初めての代表選出に萎縮し、周囲のトップ選手たちに気後れしていた宇田川投手の異変に、ダルビッシュはいち早く気づいていました。チームの投手陣全員を集めた食事会を企画し、あえて宇田川投手を主役に据えて「宇田川さんを中心に写真を撮ろう」と声をかけ、SNSに投稿。この配慮によってチーム内の壁は一気に崩れ去り、宇田川投手は緊張から解放されて本来の剛速球を取り戻し、本大会での大活躍へとつながりました。
さらに、ダルビッシュは自身が培ってきた最先端の投球理論や変化球の握りを、惜しげもなく若手投手たちに伝授しました。佐々木朗希投手や宮城大弥投手、高橋宏斗投手らに対し、ブルペンで横に並びながらスライダーやスイーパーの軌道、指の掛かり具合、投球フォームの力学的アプローチを丁寧にレクチャー。自身の技術を隠すことなく組織全体の底上げに捧げる姿は、侍ジャパンの投手陣に類を見ない一体感と急速な進化をもたらしました。