打撃を前提とする格闘技において、初心者が最初に徹底して叩き込まれるのが拳の正しい握り方です。無意識に手を握ると、指の間に隙間ができたり、手首の角度がずれたりして、相手にダメージを与える前に自らの関節を破壊してしまいます。
最も致命的な事故を引き起こすのが、親指の位置と握り込み方の過ちです。格闘技未経験者に最も多く見られる致命的なミスが、「4本の指の内側に親指を巻き込んで握ってしまう」パターンです。この状態で打撃の衝撃を受けると、親指の付け根(第1中手指節関節)に数倍の圧縮負荷がかかり、関節の脱臼や靭帯断裂、最悪の場合は母指中手骨基部の粉砕骨折を引き起こします。親指は必ず外側に出し、人差し指と中指の第2関節の上にしっかりと折り曲げて上からロックしなければなりません。
拳を正しく成形する手順は極めて厳密です。まず、小指から順番に指先を手のひらへ強く巻き込み、第1関節と第2関節を隙間なく密着させます。手のひらの中に「空気の隙間」を一切残さないよう内側へ強く絞り込み、最後に親指を人差し指と中指の外側へ添えて全体を強固に結束させます。手のひらに硬い芯が一本通ったような緊密さを作り出すことが基本です。
そして、安全かつ破壊的な打撃を放つための要となるのがナックルパート(拳頭部)の正確な認識です。ボクシングの競技規則や空手の指導書において共通して指定されているのは、人差し指と中指の付け根にある大きな関節突起(第2・第3中手指節関節)の面です。この2点と腕の骨(橈骨)が一直線になる角度を維持することで、強烈な打撃を放った際にも手首が「くの字」に折れ曲がることなく、確実な拳の怪我防止が達成されます。薬指や小指側の関節で殴ることは、医学的にも力学的にも完全な自殺行為であると知るべきです。