強烈なインパクトを持つ主題歌群に隠れがちだが、映画全体の情緒的な深みを支えているのは20曲を超えるインストゥルメンタルトラックである。『三葉の通学』や『糸守高校』で見せる軽快なアコースティックギターのピッキングは、飛騨の豊かな自然と穏やかな日常を一瞬で描き出す。
一方で、運命の歪みや彗星の接近を描くシーンでは、静寂を切り裂くストリングスと環境音が張り詰めた緊張感を生み出す。セリフによる説明を極限まで削ぎ落とし、純粋な音の質感だけで登場人物の切迫感や孤独を伝える表現力。野田洋次郎が紡いだメロディラインは、スクリーンの登場人物たちが胸の内で叫ぶ「言葉にならない声」そのものだったと言える。