当時、バラエティ特番のリング上で二人が対峙した際、視聴者が息を呑んだのは「台本を超えた身体の反応」でした。
藤原組長は、相手がタレントであっても一切の妥協を許さないことで知られていました。カール・ゴッチ直伝のキャッチ・レスリングを体に染み込ませた組長は、組み付いた瞬間に相手の重心を奪い、電光石火のアームロック(脇固め)を狙いにいきます。対するチャック・ウィルソンも、柔道で培った並外れた腰の重さと受け身の技術でこれを凌ぎ、組長の手首をしっかりと制圧して安易な極めを許しませんでした。
現場に居合わせたスタッフの回想録によれば、技の掛け合いの合間に二人が交わした視線には、お笑いやエンターテインメントの空気は微塵も存在していなかったといいます。藤原喜明が仕掛ける関節のプレッシャーに対し、チャック・ウィルソンは武道家としての骨法で対抗する――。結果としてテレビ的には成立させつつも、格闘技関係者が見れば一目で分かる「真剣な技術の攻防」がそこに刻まれていたのです。