純粋な攻撃力や作戦影響圏の広さで比べれば、空母の戦力は桁違いです。50機以上のステルス戦闘機や早期警戒機を運用する原子力空母は、半径1,000キロメートル以上の制空権と制海権を同時に掌握する能力を持ちます。しかし、戦いの舞台が「海中」へ移行した瞬間、その力関係は劇的な逆転を見せます。
空母が潜水艦にとって最大の獲物であり、潜水艦が空母の天敵とされる最大の理由は、「非対称な視界の不均衡」にあります。電波が一切届かない海中では、レーダーや人工衛星といった現代の索敵兵器が無力化されます。潜水艦を探す手段は基本的に「音(ソナー)」に限られますが、海中には複雑な水温躍層(サーモクライン)や潮流、塩分濃度の違いによる音波の屈折が存在し、潜水艦の正確な位置を突き止めることは現代科学をもってしても至難の業です。
さらに、潜水艦が放つ重魚雷の破壊力は対艦ミサイルの比ではありません。水線上に命中するミサイルとは異なり、現代の誘導魚雷は艦艇の真下(キール直下)で起爆します。爆発によって生じた巨大なガス球と水流(バブルジェット効果)が船体を下から突き上げ、次の瞬間に海面へ落ち込むことで、数万トン級の巨艦であっても竜骨(船の背骨)をへし折られて一撃で大破・沈没へと追い込まれます。