比嘉栄昇の音楽人生は、1980年代後半の伝説的オーディション番組『三宅裕司のいかすバンド天国』(通称・イカ天)から始まりました。1990年にシングル『恋しくて』で華々しくメジャーデビューを飾ると、そのブルースフィーリングに満ちた哀愁漂うボーカルが日本中に鮮烈な衝撃を与えました。
彼の歌声の評判は、単なる「歌の上手さ」にとどまりません。少ししゃがれたハスキーなトーンの中に宿る深い哀愁、語りかけるような温かみ、そして感情を揺さぶる叙情性は、他の追随を許さない唯一無二の響きを持っています。この唯一無二の歌唱力が結実したのが、森山良子との共作で誕生し夏川りみの歌唱でも知られる『涙そうそう』や、島の中学生たちと共に言葉を紡ぎ出した『島人ぬ宝』といった国民的アンセムです。
また、比嘉栄昇の功績として外せないのが、楽器メーカーのヤイリギターと共同開発したオリジナル弦楽器「一五一会(いちごいちえ)」の発明です。指一本でコードを押さえるだけで誰でも簡単に演奏できるこの楽器は、「誰もが音楽を奏でる喜びを味わえるように」という比嘉の純粋な願いから誕生しました。技術の誇示ではなく、人と人とを繋ぐ道具として音楽を捉える彼の哲学が、この楽器には色濃く反映されています。