稲荷崎戦のハイライトとして今もアニメ・漫画ファンの語り草になっているのが、どん底から放たれた「極上ラインショット」の描写です。リアルタイムで本誌を追っていた読者やアニメ放送時のSNS上では、「田中の呼吸の音が聞こえるようだった」「スポーツ漫画の歴史に残る神演出」と絶賛が吹き荒れました。
現場の緊迫感を極大化させたのは、味方セッターである影山飛雄との関係性です。影山は極限状態の田中に対し、慰めの言葉をかけるでもなく、慈悲でトスを上げるわけでもありません。影山はただ冷徹に、田中というスパイカーの折れない心を信頼し、ブロックが二枚揃う最も厳しい状況で再びボールを上げました。「トスが上がらないことこそがスパイカーにとって最大の死」を知る田中は、その重責から逃げるどころか、心の奥底で呼応します。
腕を振り抜いた先、相手の裏を突いてサイドライン上ギリギリに突き刺さった鋭角のクロス、そしてストレートの極上ラインショット。相手のブロックが閉じるわずか数ミリの隙間を射抜いたあの瞬間、田中は単なる熱血男から、コート上の誰もが認める「烏野のエース」へと完全に脱皮したのです。