辻信太郎氏がキャラクターやギフト商品を扱い始めた背景には、単なる金儲けではない切実な創業理由がありました。その根底にあったのは、十代の多感な時期に体験した太平洋戦争の過酷な記憶と、深い人間不信です。
戦時中、周囲の大人たちが手のひらを返して争い合う姿を目の当たりにした辻氏は、「人間にとって最も尊いものは平和であり、友情である」と痛感しました。戦後、人と人との心を繋ぎ、誰もが笑顔になれるビジネスはないかと考え抜いた末に辿り着いた答えが、「スモールギフト・ビッグスマイル(ほんの小さな贈り物が、大きな笑顔をつくる)」という哲学でした。
サンリオが掲げる企業理念「みんななかよく」は、創業者の平和への切なる願いがそのまま言語化されたものです。高価な宝石や贅沢品ではなく、数十円から数百円の小さなハンカチや便箋、マスコットを親しい人へ贈ることで、人と人との間に優しい絆が生まれる。この独自の思想が、世界中のファンを魅了するサンリオブランドの強固な基盤となっています。
月刊機関紙『いちご新聞』において、創業者自らが「いちごの王様」というペンネームで毎号欠かさずメッセージを執筆し続けたのも、子どもたちや若者に「友情の大切さ」「命の尊さ」を語りかけるためでした。キャラクターを通じて平和を届けるという信念は、創業から半世紀以上が経過した現在も微塵も揺らいでいません。