退去強制令書が発付された後、対象者が実際に日本を出国するまでのプロセスは、極めて厳格かつ現実的な困難を伴います。法務省の東日本入国管理センター(茨城県牛久市)や西日本入国管理センター(大阪府茨木市)などの入国者収容所における生活、そして航空機への搭乗に至る経緯は、一般のニュース報道では詳細に伝えられることが少ない領域です。
退去強制令書が発付された外国人は、送還が可能となる日まで施設内の保護室や居室で生活を送ることになります。支援弁護士や元被収容者の手記では、「先の見えない日々のプレッシャー」「母国の家族への送金が途絶えた焦燥感」といった生々しい葛藤が吐露されています。面会制限や厳格な規律のもと、身体の自由が制限されるストレスは極めて重く、現場では定期的な健康診断や心理ケアが実施されているものの、収容の長期化が健康悪化を招くリスクは常に指摘されてきました。
さらに見落とされがちなのが、強制送還の費用負担に関する原則です。入管法上、出国に要する航空券費用は自己負担が絶対的な原則とされています。本人名義の預貯金や母国の親族からの送金、雇用主などからの援助によって航空券代を確保させることが基本です。
しかし、所持金が皆無で支援者もいない場合、国費(公費)によって送還が行われることがあります。国費による送還は、税金によって賄われるため無条件に利用できる救済措置ではありません。公式資料や過去の国会答弁によると、国費で送還された記録は入管の管理システムに厳重に保管され、将来仮に再入国許可を申請したとしても、「過去に公費で送還された経済的不適格者」として上陸審査において極めて不利に作用します。また、集団での送還が必要な事案においては、国がチャーター便を手配して一括送還を実施するケースもあり、多額の公費が投入されている現状に対する議論も根強く存在します。