一方で、カルチャーが一般化するにつれて、いくつかの根強い誤解や盲点も生じています。ファッション・カルチャーの取材現場として、あらかじめ正しく整理しておくべきポイントがあります。
最大の誤解は、「ジェンダーレス女子=セクシュアリティ(性的指向・性自認)の表明である」と短絡的に結びつけてしまう見方です。もちろん当事者の中には多様なアイデンティティを持つ人々が含まれますが、ジェンダーレスファッションの本質は「表現(ジェンダー・エクスプレッション)の自由」にあります。ストレート(異性愛者)の女性が純粋にモードや美意識として中性的なスタイルを愛好しているケースも極めて多く、外見の記号だけで個人の内面やプライベートを決めつけることは厳に慎まなければなりません。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
ジェンダーレスなスタイルを取り入れるにあたって、自身との相性を客観的に見極めるための基準を提示します。
【向いている人の条件】
- 「他者からどう見られるか(他者評価)」よりも「自分がどうありたいか(自己一致感)」を重視したい人
- フリルや甘いカラーに居心地の悪さを感じており、シャープで直線的な造形に美しさを感じる人
- 定期的なヘアカットや眉の手入れなど、細部の清潔感を維持するセルフケアを楽しめる人
- 自立したパートナーシップや、フラットな人間関係を心地よいと感じる人
【慎重になるべき人の条件】
- 「ショートにすれば勝手にジェンダーレスに見える」と安易に考えている人(骨格に合わせた緻密なカット設計がないと、単なる手入れ不足に見える恐れがある)
- 周囲からの「女性らしいね」「守ってあげたい」といった庇護欲を伴うリアクションを失うことに強い抵抗がある人
- オーバーサイズを「体型隠し」の目的だけで選んでしまう人(全体のメリハリが失われ、着膨れの原因になる)
ジェンダーレスな装いとは、何かを隠すための隠れ蓑ではなく、自分の本質をより明確に提示するためのアプローチです。だからこそ、自身の骨格や内面の美意識と丁寧に対話しながら構築していく姿勢が求められます。