甲子園のグラウンド管理を一手に担うのが、ファンの間で「神整備」と称賛される阪神園芸です。彼らの吸水シート配置、バーナーによる土の乾燥、砂入れとトンボ掛けの流れるような連係プレーは全国的に有名であり、「阪神園芸がいるから多少の雨なら試合ができる」と信頼を寄せるファンも少なくありません。しかし、その屈指の技術をもってしても抗えない自然の限界が存在します。
現場取材やグラウンドキーパーの証言によると、内野の土が排水可能なキャパシティには明確な閾値(しきいち)があります。通常のパラパラとした小雨であれば、吸水性の高い砂を補充して転圧することで即座にプレー環境を復元できます。しかし、1時間あたり10mmを超える強い雨が断続的に降り続いた場合、あるいは前日から降り続いた雨で地下の排水層まで水が浸透しきっている場合、表面の水をいくら掻き出しても下から水分が滲み出てきます。
「土が息をしていない状態」「底から水が湧いてくる状態」に陥ると、いかに阪神園芸 整備状況が万全であっても、ぬかるみを防ぐことは物理的に不可能です。球団幹部やスタジアム責任者は、阪神園芸のチーフグラウンドキーパーと綿密に協議を行い、「整備に要する時間(約40〜60分)」と「その後の雨雲の抜け方」を天秤にかけた上で、苦渋の中止判断を下しています。