タイムテーブルの空き枠表示は、常に赤色で埋まっている。平日の昼間から週末の深夜まで、スタジオのスケジュール帳が白いままである時間帯はほぼ存在しない。利用者の顔ぶれも劇的に変化した。
従来のような週末のアマチュアバンド練習だけではない。ソーシャルメディアで数百万回再生を叩き出す宅録系シンガーソングライターや、普段はベッドルームで完結させているプロデューサーたちが、こぞって実空間のブースを押さえている。画面内のミックスに行き詰まった者が、最終的なボーカルテイクや生ドラムの「鳴り」を求めて駆け込んでくる駆け込み寺のような様相だ。
ある20代のトラックメイカーは語る。「家でヘッドホンをつけて作ったビートを、ここのメインスピーカーで鳴らした瞬間、音のスカスカさに絶望しました。同時に、どう直せば空気を支配できるかが一発で分かった。ここに来ないと鳴らない音があるんです」。