大半が心配のないケースである一方、適切なタイミングで医療機関に相談すべき器質的・内分泌的な病態も存在します。保護者が観察すべき重要なリスクファクターを解説します。
代表的な構造的異常のひとつが舌小帯短縮症です。これは舌の裏側にある膜(舌小帯)が生まれつき短かったり、舌の先端近くまで付着していたりする状態を指します。舌を前に突き出そうとした際に、小帯に引っ張られて先端がハート型にくびれるのが特徴的です。軽度であれば成長とともに小帯が伸展し自然に改善しますが、重度の場合は「乳首を深くくわえられない」「上手に陰圧をかけられず空気を大量に飲んで吐き戻す」「激しい乳頭痛を引き起こす」といった哺乳障害の原因となります。
さらに注視すべきは、栄養摂取が十分に行われているかを示す母乳不足のサインとの連動です。舌出しが頻繁であるにもかかわらず授乳がうまくいっていない場合、以下の兆候がないか確認してください。
- 1日の体重増加量が25〜30g未満にとどまっている
- おしっこの回数が1日6回未満で、尿の色が濃い黄色やオレンジ色になっている
- 授乳直後にもかかわらず満足した様子がなく、すぐに激しく泣き出す
- 母乳を飲むときに「浅飲み」になり、パパパと空気が漏れるような音がする
また、非常に稀な疾患ではありますが、甲状腺ホルモンの分泌が不足する「先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)」や、遺伝子異常による「ベックウィズ・ヴィーデマン症候群」などでは、舌そのものが異常に肥大化する巨舌症を呈することがあります。これらの疾患は生後すぐの「新生児マススクリーニング(採血検査)」でスクリーニングされる体制が日本全国で確立されていますが、常に舌が外に出ており、口の中に引っ込める様子が全く見られない場合は、専門的な診断が必要です。