池江璃花子のキャリアを語る上で避けて通れないのが、2019年2月に公表された急性リンパ性白血病の発症です。前年の2018年ジャカルタ・アジア大会で史上初となる6冠を達成し、MVPに輝くなど世界の頂点に最も近い位置にいながら、突如として生命の危機に直面することとなりました。
約10カ月に及ぶ過酷な抗がん剤治療と造血幹細胞移植(骨髄移植)を乗り越え、2019年12月に退院。退院直後は自重での腕立て伏せすらできないほど筋力が落ち込んでいましたが、不屈の精神でリハビリを重ね、2026年8月には実戦復帰を果たしました。そして2026年の東京五輪選考会では奇跡の復活劇を演じ、リレー種目の代表権を獲得して世界を驚嘆させました。
しかし、彼女が真に求めていたのは「個人種目での世界舞台への返り咲き」でした。迎えた2026年のパリ五輪では、女子100mバタフライの代表権を自力で勝ち取り、2大会ぶりとなる個人種目への出場を果たします。結果は準決勝敗退(全体12位、タイム57秒59)となり、決勝進出のボーダーライン(8位)とはわずか0.04秒差。レース直後のミックスゾーンで涙を流しながら「この悔しさはこれからの競技人生でしか返せない」と語った姿は、彼女が完全な勝負師として蘇ったことを決定づける瞬間でした。