「竜田」という優美な響き。そのルーツを辿ると、古代日本の詩情豊かな風景へと行き着く。
説として最も有力なのが、奈良県を流れる紅葉の名所・竜田川だ。百人一首に収められた在原業平の名詠「千早ぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」をご存知だろうか。醤油で濃く赤褐色に染まった肉の地肌と、所々に浮かび上がる片栗粉の白い斑点。その鮮やかなコントラストを、川面を彩る紅葉と白い泡に見立てて名付けられたとされる。
また、戦前の旧日本海軍の軍艦「竜田」の調理長が、限られた物資の中で生臭さを消すために肉を強固な醤油ダレに浸して揚げる方法を考案したという異説も存在する。いずれにせよ、厳しい条件や風流な美意識から生まれた料理であることに変わりはない。