幼少期に誰もが一度は口ずさんだことのある童謡『お馬』(作詞:林柳波、作曲:貴志康一)。「お馬の おやこは なかよしこよし ぽっくりぽっくり あるく」というシンプルでリズミカルな歌詞には、単なる愛らしさにとどまらない深い情景と教育的意図が込められています。
この楽曲が発表された昭和初期、馬は農耕や輸送を支える身近な労働力であると同時に、軍馬として戦地へ徴発される過酷な運命を背負った存在でもありました。作詞者の林柳波は、のどかな農村で母馬の後を無心に追う子馬の姿に強い愛着と平和への祈りを重ね合わせ、純粋な母子の絆を温かい筆致で描写したと伝えられています。
生物学的見地からも、馬の親子関係は極めて密接です。出産後の母馬は数時間にわたって子馬の体を舐め続け、匂いと鳴き声でお互いを刷り込みます。母馬が歩く速度に合わせて子馬が歩調を合わせる「ぽっくりぽっくり」という歩様は、外敵から身を守る群れ社会の規律と、絶対的な信頼関係から生まれる自然な行動様式そのものです。
現代の幼児教育において親しまれる「お馬さんごっこ(大人の背中に子どもを乗せる遊び)」も、単なる遊戯を超えた発育効果が確認されています。揺れる背中でバランスを取ることで体幹のインナーマッスルや前庭感覚(平衡感覚)が鍛えられるだけでなく、身体接触を通じてオキシトシンの分泌が促され、親子の愛着形成(アタッチメント)を深める心理的効果を発揮します。