手塚治虫の底知れぬ性への探求心を決定づけたのが、2014年に世間を震撼させた「開かずの机の引き出し」から見つかった未公開スケッチ群です。長女である手塚るみ子氏によって解錠された仕事机の奥深くには、生前決して公にされることのなかった膨大なプライベートデッサンが眠っていました。
そこに遺されていたのは、官能的なポーズをとる裸婦、豊かに実った胸の習作、さらには動物と女性が融合したエロティックな変容体の数々でした。締め切りに追われ、寝る間を惜しんで原稿を執筆していた最中にも、彼は自らの純粋な欲望と芸術的欲求の赴くままにペンを走らせていたのです。
この発見は、手塚治虫という作家が単なる「清廉潔白な国民的作家」ではなく、尽きることのない業とエロティシズムを抱えた生身の表現者であったことを強烈に物語っています。誰に見せるためでもなく、己の衝動を研ぎ澄ますために描かれたそれらのスケッチこそが、名作群の官能性を支える揺るぎない土台となっていました。