パティシエとして世界の頂点を極めた辻口氏が、なぜ今一度「和」に立ち返ったのか。その答えは、彼の血肉にしみ込んだ幼少期の記憶と、日本が世界に誇る伝統食材への深い尊厳にある。
フランス菓子の繊細なアッサンブラージュ(調合)技術をベースにしながらも、主役に据えるのは和三盆糖の上品な甘みや、職人がじっくりと煎り上げた国産黒ごまの香ばしさだ。洋菓子のバターやクリームに負けない芯のある風味を引き出すため、素材ごとの挽き具合や焼き加減、ミリ単位の配合調整が繰り返される。この妥協なき探求心こそが、他の追随を許さない芳醇な味わいを生み出す源泉なのだ。