『ホール・ニュー・ワールド』は単なる男女の甘いラブソングにとどまりません。作詞を手掛けたティム・ライス(Tim Rice)と作曲のアラン・メンケン(Alan Menken)は、閉塞感に苦しむ若者の「精神的自立と自己決定権の獲得」という極めて強い心理学的メッセージを歌詞に織り込みました。
宮殿の厳格な掟や政略結婚のプレッシャーに縛られ、鳥籠の中の鳥のようだった王女ジャスミン。アラジンが彼女に最初に問いかける言葉が「When did you last let your heart decide?(最後に自分の心に従って決断したのはいつだい?)」です。身分や他者の期待に支配されてきたジャスミンに対し、「あなた自身の意思を取り戻そう」と語りかけるこの一節こそが、作品全体の根底に流れるテーマを象徴しています。
さらに歌詞の中盤に登場する「Every moment, red-letter」というフレーズは、英語圏のカレンダーで祝祭日や記念日が「赤字(red letter)」で印刷される慣習に由来します。「あなたと過ごす一瞬一瞬のすべてが、人生のかけがえのない記念日になる」という、詩的で深い愛情のメタファーとなっています。