Web上の医療相談掲示板やSNS、当事者の手記を調査すると、ほぼ全員が一様に「最初はいつものピアストラブルだと思って放置してしまった」と証言しています。特に20代を中心とする若年層では、開けた軟骨ピアスを塞ぎたくない心理や、親や学校・職場にピアスを見つかって咎められるのを恐れる心理が強く働き、耳鼻科受診をためらう傾向が顕著です。
ある20代女性の闘病手記には、次のような生々しい経過が記録されています。「ピアッサーでヘリックス(軟骨上部)を開けてから4日目の夜、耳が熱を持ってズキズキと痛み出しました。市販のドルマイシン軟膏を塗り、保冷剤で冷やしながら我慢していましたが、翌朝には耳が2倍ほどに膨れ上がり、顔半分まで脈打つ痛みが広がって涙が止まらなくなりました」。この女性は近隣の皮膚科を受診したものの、一般的な抗生剤(ケフラール)を処方されただけで症状は収まらず、発症後7日目に総合病院の耳鼻咽喉科へ救急搬送されました。
搬送時の診断は、重症の耳介軟骨膜炎。軟骨膜の下にすでに大量の膿が貯留しており、耳介軟骨膜炎による入院の経緯として、即日入院のうえ局所麻酔下での緊急切開排膿処置が行われました。血液検査では炎症反応(CRP値)が8.5 mg/dLまで跳ね上がっており、緑膿菌を叩くための広域抗菌薬(シプロフロキサシンやメロペネムなど)の強力な点滴投与が24時間体制で続けられました。入院期間は11日間に及び、退院後も通院処置が1か月以上続くことになりました。本人の「ピアスひとつで入院になり、耳の形も少し縮んでしまった。痛みを我慢したことを一生後悔している」という言葉は、この病態の恐ろしさを如実に物語っています。