今回の賃上げ圧力を後押ししているのは、審議会での議論だけではない。隣県・熊本でのTSMC(台湾積体電路製造)進出に伴う巨大な経済波及効果が、福岡の労働市場を強力に牽引しているのだ。物流、建設、派遣、ITに至るまで、九州の優秀な人材が集積する福岡において、引き抜き合戦が過熱している。
熊本周辺の関連工場や物流拠点が破格の時給で求人を出す中、福岡県内の事業所も時給を引き上げなければ人が集まらない。「法定の最低賃金がどうこうと言う前に、市場の相場が勝手に競り上がっている」と、福岡市内の人材派遣会社幹部は漏らす。この「実勢賃金の引き上げ」が、結果として最低賃金の改定議論を後押しする逆流現象が起きている。