グループ卒業後、彼女が選んだ道は本格的な女優への転身だった。AKB48時代に培った圧倒的な存在感と、どこかミステリアスな空気感は、映画界のトップクリエイターたちの目をすぐに惹きつけた。
中でも映画『イニシエーション・ラブ』での演技は、彼女のキャリアにおける大きな転換点となった。昭和の終わりを舞台にした一見可憐でありながら複雑な内面を持つヒロインを鮮やかに演じきり、観客と批評家を唸らせた。秋元康氏もかねてより「前田敦子はカメラの前で化ける」とその天性の表現力を高く評価していたが、それが映画界でも証明された形だ。
リアルな人間味を感じさせる演技の根底には、幼少期に実家で育んだ地に足のついた感覚がある。浮世離れした芸能界の空気に呑まれることなく、等身大のリアリティを役に宿すことができるのは、家族との日常を大切にしてきた彼女ならではの強みと言える。