「蒲鉾なんてどれも同じ厚さで切ればいい」と考えているなら、それは大きな損失です。蒲鉾専門の老舗職人や官能評価の実験データにおいて、板わさのかまぼこの厚さの黄金比は「12mm(約1.2cm)」と導き出されています。
蒲鉾特有のプリッとした弾力としなやかな噛みごたえは、業界用語で「足(あし)」と呼ばれます。この「足」は、魚肉タンパク質のアクトミオシンが加熱によって強固な網目構造を形成することで生まれます。薄く切りすぎるとペラペラとして網目構造の弾力を歯で感知できず、逆に厚すぎると噛み切るのに余計な力が必要となり、すり身本来の上品な甘みや旨味分子が口内に広がる前に咀嚼の疲労感が勝ってしまいます。
12mmという厚みは、前歯を入れた瞬間に心地よい反発を感じ、奥歯で押し潰した瞬間に魚本来の旨味がじわりと溶け出す絶妙な寸法です。老舗として名高い小田原の鈴廣かまぼこなどの高級蒲鉾を扱う料理店でも、この11〜12mmの切り幅が基本として厳格に守られています。