製造プロセスの自動化やAIによる品質管理が急ピッチで進む食品業界だが、鰹節の熟成ばかりは未だに人間の五感を越える技術が存在しない。気温や湿度の微妙な変化、鰹自体の個体差に応じた細かな調整は、熟練の職人が培ってきた感覚に依存するからだ。
カビの付き具合を目視で確かめ、乾燥の度合いを音や触感で聞き分ける。長年の勘を研ぎ澄ませたこのプロセスこそが、他では決して真似できない雑味のない純粋な出汁を実現する。効率を優先して工程を簡略化すれば、一見すると同じように見える鰹節であっても、火を通したときに立ち上る香りの奥行きが根底から異なってしまうのだ。