印象的なタイトルである『星守る犬』という言葉には、古くからの比喩表現に基づく深い意味と由来が込められています。劇中でも語られる通り、「星守る犬」とは「犬が夜空に輝く手の届かない星をじっと見つめ、欲しがり続けて守るように佇む姿」を指す言葉です。転じて、「手に入らないものをいつまでも求め続ける人」を嘲笑・自虐するニュアンスを含んでいます。
しかし、原作者の村上たかし氏が本作に込めた真意は、決して愚かさへの嘲笑ではありません。周囲から「無駄な努力」「見果てぬ夢」と笑われようとも、手が届かない星を見上げ続ける純粋さこそが、人間が生きていく上での切ない尊厳であり、希望そのものであるというメッセージが託されています。
結末の真相を紐解くと、お父さんは人生の終着点において社会的な地位や財産、家族のすべてを失いました。客観的な境遇だけを見れば完全な挫折者かもしれません。しかし、お父さんにとっての「星」であった愛犬ハッピーは、最期の瞬間まで彼のすぐ隣にいてくれました。ハッピーにとっても、お父さんと過ごした日々こそが何物にも代えがたい幸福であり、夜空の星のように輝く思い出でした。二人の死は痛切な別れであると同時に、魂の救済が成し遂げられた瞬間でもあったのです。