1982年に京都で生まれた抜水摩耶は、幼少期から日本の伝統的な視覚文化と都市のポップカルチャーが共存する環境で育った。彼女が本格的に絵画の道を志したのは、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)に進学してからのことだ。油彩画の伝統的技法を基礎としながらも、彼女の関心は自らの内面にある違和感へと向かっていた。
在学中から頭角を現した抜水は、学生という枠組みを飛び越え、精力的に作品を発表し始める。大学卒業前後から彼女のスタイルは確立されつつあった。輪郭線を強調した独特のペインティング、鮮やかな色彩設計、そして視覚的な緊張感を生み出す構図の妙である。
特に日本の現代アート界を牽引する名門「ミヅマアートギャラリー」での発表は、彼女のキャリアにおいて決定的な転機となった。同ギャラリーは会田誠や山口晃など、日本の伝統的文脈やサブカルチャーを圧倒的な現代アートへ転化させる鬼才たちを輩出してきたことで知られる。そこで作品を発表したことは、抜水摩耶が単なるイラストレーターではなく、批評性を持った現代美術家として認知されたことを意味していた。