1993年、英知出版から放たれた写真集『優しい追憶』は、稀崎優というモデルの資質を最大限に引き出した名作として数えられる。約200カットにおよぶ膨大な写真群は、時の流れを止めたかのような錯覚を観る者に与える。
フィルム特有の粒状感。柔らかく差し込む室内光。影の落ち方ひとつにまで計算が及んでいる。身体の曲線を強烈に誇張するのではなく、風景と同調させる手法が取られた。この作品によって、彼女のヌード表現は一目置かれる存在となった。
名手・西田幸樹との相乗効果が生んだ『FAIRY』
稀崎優のキャリアにおいて、卓越した視点を提示したのが写真家・西田幸樹の手による写真集『FAIRY』である。タイトルが示す通り、現実感を意図的に排除した幻想的な世界観が構築された。
西田は、被写体の肉体を「造形美」として捉える手腕に長けている。緑豊かな野外や水辺でのロケーション撮影において、稀崎優の皮膚感覚や表情の変化が見事に記録された。光の反射を巧みに利用したショットは、単なるヌード写真の領域を超え、絵画的な叙情性を帯びている。