事件の発端はあまりに不可解だった。横浜市や伊勢神宮、あるいは小学校への襲撃予告が相次ぎ、警察は通信ログから瞬時にIPアドレスを特定。契約者を容疑者としてスピード逮捕した。しかし、拘束された人物たちには共通点があった。全員が「そんな書き込みはしていない」と口を揃えたのだ。
捜査の裏側にあったのは、警察の過度なIPアドレス依存だ。当時は「IPアドレス=発信者本人」という固定観念が捜査本部に根強く残っていた。犯人はこの盲点を冷酷に突いた。フリーソフトに潜ませた不正プログラムを通じ、見ず知らずの第三者のパソコンを遠隔操作して予告文を自動送信していたのだ。自白強要の末に嘘の供述書を作成させてしまった失態は、刑事捜査における客観的検証の欠如を露呈させた。