当時、著者の百田尚樹は飛ぶ鳥を落とす勢いにあった。歴史小説『永遠の0』やビジネス感動巨編『海賊とよばれた男』など、立て続けに爆発的ヒットを放ち、国民的ベストセラー作家としての地位を確立していた時期である。
物語をドラマチックに構築する卓越した筆力は、フィクションの世界でいかんなく発揮されていた。しかし、実在の人物を取り扱う実録ものでその才能が向けられた際、作家の強い情念が裏付け取材の客観性を上回ってしまったのではないかとの指摘が相次いだ。フィクションと実録ものの間で生じた歪みが、この騒動の根底にあったと言える。