永六輔氏の偉大な生涯を語る上で欠かせないのが、作詞家としての卓越した功績だ。作曲家の中村八大氏と組み、歌手の坂本九氏が歌った『上を向いて歩こう』は、国内での大ヒットはもちろん、全米ビルボードチャートで首位を獲得するという快挙を成し遂げた。この曲は海外で「SUKIYAKI」として親しまれ、世界中で愛され続けている。
昭和歌謡の歴史において、この「六・八コンビ」が生み出した楽曲群は異彩を放っていた。一見すると明るく口ずさみやすいメロディの裏側に、どこか哀愁と孤独感が漂う。失恋の傷心を描いたとされる歌詞だが、実は永氏自身の安保闘争への敗北感や若き日の挫折感が投影されていたとも言われる。個人的な孤独を万人の共感へと昇華させる言葉の力こそ、彼が昭和歌謡界に遺した最大の遺産である。