一樹の自死という最悪の悲劇によって、長谷川家は完全に崩壊します。母・昭子は過食症を患い家に引きこもり、父・昭彦は耐えきれずに家を出て行方不明に。美貴は髪を切り落として自暴自棄な行動を繰り返し、次男の薫だけが虚無感を抱えたまま東京の大学へと進学します。
バラバラになった家族を再び引き寄せたのは、老犬となった愛犬・サクラの存在でした。人間たちの都合で翻弄されながらも、常に無償の愛を注ぎ続けてきたサクラは、重い病に侵され余命わずかとなっていました。
サクラの危機を知った家族は、2年ぶりに実家へと集結します。変わり果てた姿の母、帰郷した美貴、そして音信不通だった父も雨の中ふらりと戻ってきます。家族全員に見守られながらサクラが息を引き取った瞬間、張り詰めていた長谷川家の感情が決壊します。
長男の死以来、誰も触れることができなかった「悲しみ」と「後悔」を吐き出し、全員で涙を流しながら餃子を食べる家族。サクラの死という最後の痛みが、皮肉にも家族が再び生きていくための再生の光となったのです。