学校現場における具体的な摩擦として記憶に新しいのが、2012年に起きた松江市教育委員会による閲覧制限要請だ。市内の小中学校に対し、過激な描写を理由に閉架措置を求めたこの判断は、全国的な報道とともに大きな批判を浴び、翌年に撤回される事態となった。知る権利や読書の自由を守るべき図書館の原則と、児童への配慮の狭間で自治体が揺れた象徴的な出来事である。
さらに波紋を広げたのが、被爆地・広島での教材見直しだった。広島市教育委員会は、独自の平和教育プログラム「ひろしま平和ノート」に長年掲載してきた本作の一部引用を差し替える方針を決定した。ゲンの家族が生活のために浪曲を歌ったり、コイを盗んだりする場面が「現代の児童の実態に合わず、被爆の実態を正しく理解しにくい」という理由が挙げられた。しかし、過酷な状況下を生き抜く逞しさを描いた本質が削がれるのではないかと、市民や被爆者団体からは強い異論が噴出した。