名門校の看板が突如として下ろされたあの日から、道場の時計は一時止まった。問題発覚後、東京農業大学は即座に調査委員会を立ち上げ、部活動の無期限活動停止という重い決断を下した。勝利至上主義の陰に隠れていたガバナンスの不備や、学生間のコミュニケーション不足が徹底的に洗い出された。
再始動にあたり、一般社団法人日本ボクシング連盟の指導指針に完全準拠した新たなコンプライアンス体制が構築された。外部有識者を交えた倫理委員会の設置、選手一人ひとりのメンタルケアと学業状況を追跡するサポートシステムの導入など、旧来の体育会気質を根底から覆す施策が次々と実行に移されている。
新監督に就任した指導者は「勝つこと以前に、社会から応援される人間を育てることが我々の責務だ」と語る。練習時間は短縮され、科学的なトレーニングメソッドとオープンな対話を中心とした近代的なアプローチへと舵が切られた。