宮崎亭の代名詞とも言えるのが、皿の端に添えられた「500万年前の塩」です。オーストラリアの古代地下湖水から採取されたとされるこの天然結晶塩は、現代の海塩に比べてミネラルバランスが極めてまろやかで、塩角(カド)が立たない特徴を持っています。
「なぜ濃厚なデミグラスソースやオニオンソースを使わないのか?」という問いに対し、店主の哲学は明快です。上質な黒毛和牛の脂には、本来それ自体に甘みと旨味成分(グルタミン酸やイノシン酸)が凝縮されています。ここに過剰な糖分や酸味を持つソースをかけると、繊細な肉の風味が覆い隠されてしまいます。ミネラル豊富な塩をひとつまみ乗せることで、浸透圧によって肉汁の甘みが劇的に引き立ち、肉本来のポテンシャルを極限まで体感できる仕組みです。
ハンバーグだけでなく、ステーキの焼き加減に関しても職人技が光ります。表面は香ばしくキャラメリゼされ、中は絶妙なロゼ色を保ったミディアムレア。肉塊の内部温度を正確に見極める火入れ技術があるからこそ、塩だけで完結する至高の味わいが成立しています。