木に絵の具を定着させる上で、避けて通れない関門がある。それが下地処理だ。木材は生きており、大気中の湿度を吸っては吐き出し、微細な伸縮を繰り返す。油分やヤニを含んだ導管も走っている。そのまま着色すれば、絵の具の水分で木肌が毛羽立ち、ヤニが染み出し、乾燥後には密着不良を起こすのがオチだ。
成否を分ける絶対的キーアイテムが、下地剤「ジェッソ」である。炭酸カルシウムとアクリル樹脂エマルションで構成されるジェッソは、木材の表面を平滑に整え、絵の具の食いつきを劇的に高めるアンカーの役割を果たす。吸い込みの激しい針葉樹や合板には、粒子が細かく目止め効果の高い標準タイプをセレクトするのが2026年の定石だ。木目を完全に隠蔽したいならホワイトジェッソ、木の地肌を活かしつつ定着力だけを得たいならクリアジェッソと、狙う仕上がりに応じて使い分ける。
塗布前のサンディングも抜かりなく行いたい。まず240番程度のサンドペーパーで木目に沿って研磨し、粉塵を硬く絞った布で完全に拭き取る。その後、水で10〜20%ほど希釈したジェッソを平筆で均等に塗り広げる。一度に厚塗りせず、薄く塗って乾燥させてから400番で軽く撫で、2層目を重ねる。このわずか2工程の手間が、10年経ってもビクともしない強固な塗膜を生み出す。