三内丸山遺跡の生活実態を解明する上で、決定的な役割を果たしたのが最先端の自然科学分析です。出土した木柱や植物遺体の植物DNA分析を行ったところ、周囲に自生していたクリは自然交配の野生種ではなく、特定の優良系統を選別して人為的に植樹・育成していた「栽培クリ」であることが判明しました。
縄文人たちは、行き当たりばったりの採集に頼っていたわけではありません。集落の周囲に大規模なクリ林を造成し、主食となる堅果類を計画的に収穫・貯蔵する高度なアグロフォレストリー(森林農業)を確立していたのです。さらに、ウルシやエゴマ、ヒョウタンなども栽培管理されており、植物資源を巧みにコントロールする知恵を持っていました。
食料基盤の安定は、精神的・文化的な発展をもたらしました。集落内には大型の共同貯蔵穴が多数設けられ、飢餓を防ぐ備蓄システムが機能していたことがわかっています。自然を破壊し尽くすのではなく、生態系と共生しながら資源を持続的に再生産する――。これこそが、1500年という驚異的な長期定住を支えた技術的基盤でした。