アスリートの選手生命は短い。特に30代半ばを過ぎた錦織にとって、日々のコンディショニングは命綱だ。彼女は結婚後、フードマイスターなどの資格取得を視野に入れながら、徹底した栄養管理を学んだという。遠征先でも日本食に近い栄養バランスを再現し、彼の疲労回復をサポートしている。
それ以上に大きかったのが、精神的な支えだ。敗北の悔しさ、リハビリ中の焦燥感、引退の二文字が頭をよぎる瞬間。誰よりも孤独な戦いを続ける錦織にとって、自宅は唯一、テニス選手ではなく「一人の人間」に戻れる場所だった。彼女の存在が、彼の張り詰めた緊張の糸を優しく緩めていたのは想像に難くない。