伊東四朗という役者の骨格を語る上で外せないのが、輝かしい出演経歴と、それを陰で支え続けてきた家族の存在です。
1983年に放送され、最高視聴率62.9%というテレビ史上の金字塔を打ち立てたNHK連続テレビ小説『おしん』。伊東四朗が演じたのは、主人公・おしんの父・作造でした。貧しさに苦しみ、時に理不尽な厳しさを見せながらも、心の底で娘を不器用に愛する父親像は、日本中を涙の渦に巻き込みました。それまで「てんぷくトリオ」や『みごろ!たべごろ!笑いごろ!!』での「電線音頭」や「ベンジャミン伊東」として爆発的な笑いを取っていた喜劇役者が、骨太のシリアス俳優として日本中に認められた瞬間でもありました。
そして平成に入ると、日本テレビ系『伊東家の食卓』で一家の温厚な父親役として司会を務め、裏ワザブームを巻き起こしました。子供からお年寄りまで誰もが親しめる安心感のあるキャラクターは、伊東四朗の誠実な人柄そのものでした。
私生活に目を向けると、伊東四朗は5人兄弟の4番目として下町の温もりの中で育ち、自身の家庭においても長年連れ添う妻への深い敬意を抱き続けています。夫婦関係においてはお互いの領域を尊重し、穏やかな家庭環境を保ち続けてきました。
また、次男である俳優・伊東孝明(いとう たかあき)との関係性も見事なものです。テレビ朝日の名物サスペンス『西村京太郎トラベルミステリー』シリーズでは、十津川警部(高橋英樹)の相棒・亀井刑事役を伊東四朗が務め、その部下刑事役として息子の伊東孝明が共演を果たしました。二人の間には、芸能界の二世タレントにありがちな過度な甘やかしや依存関係は見られません。現場では厳格な先輩後輩として接し、仕事が終われば適切な距離感を保つという、心理的に自立したプロ同士のバウンダリー(境界線)が確立されています。この健全な親子関係こそが、晩年になっても伊東四朗が精神的な平穏を保ち、仕事に集中できる強固な土台となっています。