検索エンジンやSNSのサジェストで頻繁に目にするのが「サイバーシティビル 閉館」「廃墟」「ゴースト化」といった不穏なフレーズです。なぜこのような事実無根の言説がネット上で独り歩きしてしまったのでしょうか。取材班が過去の商業データと不動産履歴を追跡したところ、3つの構造的な要因が浮き彫りになりました。
第1の要因は、かつてビルを象徴していたメガテナントの相次ぐ撤退と業態変更です。2000年代から2010年代にかけて、フロア全体を占有していた大型アミューズメント施設や旗艦店レベルのディスコ・クラブが契約満了に伴い退去した時期がありました。改装工事中のシャッターが下りた光景や、フロア全体がスケルトン状態になった期間を目撃した利用者の投稿が、SNSを通じて「サイバーシティビル全体が終わった」という誤認として拡散した経緯があります。
第2の要因は、建物の構造的特徴に起因する視覚的ギャップです。同ビルは内部にエスカレーターと吹き抜けを抱える贅沢な設計となっていますが、近年のテナントは個室居酒屋や防音性を重視するアミューズメントが多いため、通路側を遮音壁で塞ぐ内装が増加しました。その結果、かつてのような「フロア全体が見渡せてフロア間を行き交う熱狂」が外から見えにくくなり、館内の共用部だけを歩くと閑散として見える時間帯が生じるようになったのです。
第3の要因は、すすきの駅前地区(南4条西4丁目周辺など)で進んだ近年の大型複合再開発ビル群との対比です。新築の超高層ランドマークがメディアで連日報道される中、平成初期のモダニズム建築である本ビルに対して「旧世代の遺構」という先入観が働き、ネット上で誇張されたゴーストタウン説が形成されました。しかし現地に足を運べば明らかなとおり、札幌サイバーシティビルは現在も全フロアにわたって多数の営業店舗が稼働しており、閉館の予定は一切確認されていません。