1990年前後、テレビの画面は欲望と刺激に満ちあふれていた。視聴率のためなら何でもありの空気が充満し、規格外の奇人・変人は格好のコンテンツとして消費された。その異様な潮流のど真ん中に、麻原彰晃の姿があった。空中浮揚を謳い、奇抜な空中パフォーマンスを披露する髭面の男。メディアは彼を危険な宗教者としてではなく、視聴率を稼ぎ出す「怪しげで面白いキャラクター」として迎え入れたのだ。
深夜番組やワイドショーにとどまらず、バラエティ番組にもその怪異な影は忍び寄る。1990年の衆院選における「真理党」の異様な選挙パフォーマンスは、茶の間の格好のネタとなった。奇怪な仮面をかぶり、軽快なメロディに乗せて踊る信者たち。テレビ制作者たちはそれを滑稽なスペクタクルとして扱い、パロディの素材として貪欲に消費していった。危険信号は完全にギャグの笑い声にかき消されていた。