おくどさんを造り出すには、高度な左官技術が欠かせない。耐火煉瓦を積み、京都特有の聚楽土(じゅらくつち)や深草土に藁スサと消石灰を混ぜ合わせた泥を、幾重にも塗り重ねていく。熱膨張によるひび割れを防ぎ、美しい曲面を描くこの職人技は、後継者不足により危機に瀕していた。しかし今、京町家建築業の現場で劇的なパラダイムシフトが起きている。
現代の建築基準法や防火性能を満たしながら、新築やリノベーション住宅のリビングに設置可能な「コンパクト・モダン竈」の開発が進んでいるのだ。現代の左官職人たちは、古来の土壁の調湿・蓄熱性能を最新の断熱工法と融合させ、日常的に使える安全で美しい意匠を生み出した。無機質なシステムキッチンに温もりある土の質感が加わることで、住空間全体に有機的な生命感が吹き込まれている。